『愛と誠』映画化 三池監督に脱帽! 拍手を! すべての出演者に拍手! 拍手を…!

―愛は戦いである―
 というインドのネール元首相が娘さんに当てた言葉で始まる、愛と誠の物語。皆様ご存知の通り、その名も「愛」という名の少女と「誠」という名の少年の物語です。先日、皆様より一足お先に観てきました。(あしからず)
 昨年夏、ロケ現場に一度おじゃましていましたので、原作者の関係者というだけでなく、ミーハー的な親近感というふうな思いで、作品の仕上がりを楽しみにしていたのです。

 まずは「愛」役の武井咲さん。「咲」一字で「えみ」と読ませるのだそうで、あまりテレビを観ない私には、彼女の知名度がどれほどのものなのか、それ以前に彼女の存在を知っていなかったのでした。
 ロケ現場で初めてお会いして、現役の高校生だと知らされました。黒い瞳がキラキラと光っていて、笑顔が美しく、純粋だからこそ持っている真の強さを感じさせるところが、なるほど「愛」役にぴったりだと思ったものでした。
 映画化が決まり、キャスティングを知らされた後に、私は一番下の息子に彼女の事を聞いてみたのです。
 息子曰く、「今一番売れているんじゃないかな、目力があって、全然他のタレントと違うタイプだよ」
 なんて事はない。息子自身が彼女のファンだったのでした。
 三池崇史監督に「これ以上の『愛』役はいないだろう」と言わしめた女優冥利に尽きる人。

 そして「誠」役の妻夫木聡君は、役者としてめきめき頭角を表し、スター街道まっしぐら。このまま行けばスターの上に大がつくやも知れぬ…と、私は見ています。映画大好き人間の私は、ジャンルの違う役どころの彼を、ずいぶん観てきたからです。 そして、実物の彼…。スクリーンの中で演じる人を、生で見る。これがやっぱり楽しみなのですよー。なんと優しい目なのでしょうか? 瞳の奥の奥の、そこに魂の中心であるかのような一点が、絶えず微笑んでいるように見受けられたのです。 
 ああ、この目がどんな「誠」を作るのか…。
「愛」は「誠」の中にある、この魂の一点を信じ切り愛し通した―
 主人がこの作品を通して伝えたかった、いくつかのテーマに思いを馳せた時、妻夫木君が作り上げる「太賀誠」に間違いないだろうと思えました。そして案の定、彼は見事に「誠」になっていたのです。
 役者さんて、スゴイ!です。

 そして異色?かな…。権太役の伊原剛志さん。
年齢的には高校生役は無理でしょうが、実は私は彼がテレビに出始めた頃からのファンなのです。彼の名前が知りたくて、ドラマの後に流れる出演者名を目で追い、ほかのドラマでやっと伊原剛志という彼の役者名を知ったのでした。
 体型のバランスがとても良く、子供っぽいいたずらっ子のような部分と、男気の骨っぽい部分、ニヒルな冷たさと適度な色っぽさ、書き出せばとめどない魅力を合わせ持った役者さん…。あの頃からどのくらい経ったのかしら。十五年? 二十年?
 主人が逝って二十五年です。この二十五年間の時の経過が私の中ではとても速く、且つ曖昧なので、彼を初めて知ったのが、その前なのか後なのか…。下瞼をぷっくりとさせた人なつっこい笑顔は今でも健在でした。

 「愛」の母親役の一青窈さんは、とても上品できれいな方、良家の母親役を見事に演じていました。

 父親役の市村正親さんは、「劇団四季」の重鎮的存在の方です。鍛錬をしていらっしゃるのでしょう。キビキビとしてキレが良く、理にかなった体の動きはさすがとしか言いようがありません。昨日・今日のミュージカルスターでは無いぞ!という感じでした。

 そして岩清水弘役の斉藤工君は、なんと彼が幼少の頃から家族ぐるみのお付き合いという間柄なのです。ですから彼がモデル時代からずっと応援していて、あまり大きくない映画会社の作品とか、あまり一般的でない配給の映画でも、彼の名を見つけてはビデオ屋で取り寄せてもらっていました。やがて日曜日の夜に恒例となっているNHKの連続ドラマに出演、また民放のドラマ等々、彼が出演すると聞けば、必ずチャンネルを回したものでした。
だからロケ先で久しぶりにお会いした時の私の第一声は
「ずいぶん大きくなったわねぇ〜」
だったのでした。これには周りにいたスタッフさん達に笑われてしまいましたが、本当に大きく育っていたのです。185cmくらいでしょうか?
 私は彼を知っていても、彼の記憶にはきっと私はいないはず。梶原一騎の女房と聞いても、私の顔はきっと知らないはずです。一番下の息子と遊んだ記憶は…?
 ともかく、これがご縁というのでしょう。成人した工君は本当に格好良い青年でした。原作の中の岩清水よりも、はるかにはるかに男らしく、一歩間違えば野暮ったく滑稽に見える七・三に分けたヘアースタイルや黒ぶちメガネが、とても彼に似合っていて、育ちの良い岩清水が自然体でそこにいました。

つづきはまた後ほど。お楽しみに!